プラグギャップのお話。 兵庫県加古川市のガレージ トライシクルのブログです

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プラグギャップのお話。

今回は縁の下の力持ち?スパークプラグについてお話します。
当店ではスパークプラグはNGK製のB8HS-10という船外機などに使われる少し特殊なプラグを使用しています。

 

 

勘のいい方ならお気づきだと思いますが通常、市販の二輪用B8HSとかのプラグギャップは0.8mmに設定されています。
B8HS-10の後ろの方にある-10と言うのはプラグギャップの事で10ミクロン、すなわちプラグギャップは始めから1mmに設定されています。車用などは1.2mmとかの設定が普通にある位です。

 

 

これはプラグギャップを測定するプラグギャップゲージという工具ですが、最近の若い整備士さんなら見た事もないかもしれません・・・
なんせフューエルインジェクションによって空燃比も超シビアにコントロールされ、点火においてもダイレクトイグニッション等が当たり前になり、点火エネルギーも昔とは比較にならない程強くプラグの被りなど皆無です。
ではこのプラグギャップは何を意味するかというと、2次コイルで何万ボルトに昇圧された電流は空間を雷のように流れます。
この雷は電圧が高いと電線等がなくとも電気が空間を飛んでいきます。それゆえ街中の高圧線(2.5万ボルト)などは近くに寄っただけで人間など真っ黒コゲになるそうです・・・
だからエンジンでも12Vを点火コイルにて1万~2万Vぐらいに昇圧し、空間に火花を飛ばしています。
でも逆に言うと、電圧が低くかったり、あまりにも距離があると火は飛びませんし、エンジン内の点火プラグは燃料などの遮蔽物に常に邪魔されます。ましてや2サイクルエンジンでは分離であれ混合であれ、燃料中にガソリンより燃えにくい潤滑油が含まれます。
燃焼室内の火炎というのは燃焼室全般に広がるのに時間がかかります、それゆえ上死点より何度か前で火を飛ばして、そのタイムラグを補っています。燃焼室内に広がる火炎も一番最初はプラグギャップ内で小さな火炎ができ、その火が燃焼室内にじわっと広がるそうです。とはいえ0.01秒とかのお話ですが・・・
だから誤解を恐れずに言えば、プラグギャップは広けりゃ広い程いいわけなのですが、広すぎると前出のように火が飛ばなくなる「失火」状態になります。ではどうすればプラグギャップを広くとる事ができるか?
ならばプラグに送る電圧をもっと上げればよい訳で、そんな理由からCDIやフルトラではDIなどが開発されました。
もう一つ火花自体の強さや火炎伝播に大きく関わるのがプラグ自体の電極の太さです。
電極は細ければ細い程良いとされますが、あまりに細いと自身の高電圧により電極がすぐに摩耗してしまいます。

 

 

このプラグは昭和の終わりの頃、アフターマーケット界で一世を風靡した「Vプラグ」という商品です。
聞けば中心電極だったか忘れましたが、V字に削られ電極を細くしたのと同じ効果が出るそうで、
当時みんなこぞって高価なVプラグに交換していましたね。

 

 

今頃では、中心電極の先っぽに摩耗に強いイリジウムという白金のような高価なマテリアルを使って保護し、極端に細い電極でも摩耗し難く火花が強いイリジウムプラグが四輪の世界ではプラグ交換のし難さも手伝って主流になりつつあります。
ただ、2サイクル車にイリジウムプラグは相性があまり良くありません・・・電極の先端に貴金属チップがある構造上、ワイヤーブラシでゴシゴシなんてご法度です。完全にセッティングが出ているなら問題ないのかもしれませんね?

 

 

改めてアップで見ると中心電極の細さに驚きますね!

先にも述べたように、2サイクルエンジンの場合、電極の細さや要求電圧以上に「燃えにくさ」という問題がプラスされます。
しかし、今では2サイクルオイルの飛躍的な性能向上により50:1という昔では考えられないような混合比での運転が可能になりました。標準的な分離給油車両の混合比は20:1~25:1に設定されているので、混合専用オイルを使用することで「燃えにくさ」という面が解消されるのでプラグギャップが1mmでも被る事がなく、火炎伝搬が良くなり結果的に燃焼状態が良くなるようです。
最近では「ブログを見て混合化したら、凄く調子が良くなった」と遠方の方々からも嬉しいご報告を頂くことが多くなりました。
混合化によって爆発力が上がるだけでなく、プラグギャップが広げられ、点火も強くなる相乗効果で多くの方に恩恵を体感して頂いております。
H1、とくにエグリの頃など良質なオイルが無い上、初めてのリッター100馬力越え車両に北米を意識して濃いめの混合比にしたと川重の開発の方から聞いたことがあります。被りに対し、苦肉の策として沿面プラグなるものを採用していたのもうなずけます。
4サイクル旧車の世界ではもはや常識となりつつある、高性能アフターパーツのウオタニさんの点火システムも高電圧化によってワイドプラグギャップの設定となっています。もうすぐ発売予定のCDIに限ってはギャップ1.2mmでも楽勝で火が飛びそうな勢いです。
しかし、せっかくの高性能点火装置や高性能オイルを使ってるのに、肝心のプラグが「当時物」ではお話なりません・・・
混合化+PWKキャブ+CDIシステムで、補器の近代化により大幅なパワーアップと信頼性の向上が可能となりますが、縁の下の力持ち、「プラグ」について少しでも考えて頂ければと思います。
最初に市販二輪用B8HSのプラグギャップは0.8mmですと言いましたが、混合化された方、船外機用のとの差0.2mmがどう出るのか?コスト的にもお手軽ですので是非ご自身の単車で体感してみて下さいネ。

たかがプラグ、されどプラグです。

NGK B8HS-10   490円(税込み価格539円)

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