兵庫県加古川市のガレージ トライシクルのブログです Archive | 7月

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250SSのベース車両S1C が入荷しました。

250SSのレストアベース車が入荷しました。
ベース車なので、程度も何もないですが、割合欠品が少なそうなので思わず触手が。
何よりあの煩わしい二年に一回の車検も250なのでありません。
腐っても2サイクルなので、それなりに走りますし、何よりあの官能的なトリプルサウンドに気楽に乗れちゃう250は魅力です。

しかし、昨今の旧車価格の高騰にはため息がでます・・・
当店でも仕入れ原価の凄まじい高騰に頭を抱えています。
このSSなんてエンジンが焼き付いて、キックが下りません・・・
おそらく何年も放置された感があり、一般の方から見ると「産業廃棄物」以外の何者でもありません。

旧車の世界では、「高いから良いもの」なんて事はないから恐ろしいんです。
本当にいい車両はお店に並ぶ事はまれです。なぜなら本当にいい個体は、マニア間で取引されてしまう事が多いからなんです。
だから中途半端な程度の車両をだましだまし乗るより、このような不動車を全バラしてイチからやり直した方が安心して乗って頂けると思います。

 

旧車に憧れて買ったはいいが、まともに走らせずに売却というパターンは結構多いようですね。
だからこそ当店ではできるだけ安価なベース車を最初に徹底的に修理してから乗ってもらいたいのです。
「旧車だから・・・」なんて言葉で安易に妥協しないでほしいんです。確かにこの当時の車両は現在の車両のように全くメンテナンスフリーとはいきませんが、新車だった当時、そんなに頻繁に故障ばっかりしてた訳ではないハズです。
ただ、修理にも「予算」はありますから、全てと言う訳にはいきません。当店では、やはり「走る」「曲がる」「止まる」「まっすぐ走る」に重点を置きたいと考えています。

 

このキックペダルの角度にピンときた貴方は相当オタ・いえ、マニアな方かもしれません(笑)

今となっては逆に新鮮なフロントツーリディングドラムブレーキ。
SSのみならず、KH250のド初期まで化石のようなドラムブレーキですが、キチンと調整してあげれば意外にKHのディスクよりタッチは良かったりします。それに本格的に走り込みたければ、KHのフロント廻りがボルトオンで流用できますしね。
でもピカピカにバフ掛けすれば絶対ディスクより存在感がありますね。

これはリアハブですが、ブラスト&バフ掛けでこんなに美しく・・・

 

この車両は逆輸入車、いわゆる国内物ではありません。
確かに、国内物の歴史の重みも素晴らしいかもしれませんが、高温多湿な日本と違い、湿度の低い国からの帰国子女達は年数の割りにサビや腐食が少なく、レストアベースには最適です。

タンクやフォークだって殆ど腐食はないんです。

国内物なら、よっぽど保管場所とかに恵まれていないと、シートベースなんて見るも無残な物が多いですが、やはり湿度の関係か、フレーム廻りもサビは比較的少ないです。

タンクの塗装が剥げた所から、元々のブルーの塗装が見え隠れしています。
フレーム番号からしても、この車両は、通称「刀ライン」のS1Cのようです。

 

こんな感じの250SSのベース車ですが、これから仕上げていきますので、気になる方がいらっしゃいましたらお気軽にご連絡下さいませ。

GSX400FSインパルス フロントフォークOH ANDFとセミエアサス。

「インパルス」と言う車名で貴殿はどの機種のインパルスを思い浮かべますか?
最近の若い方なら水冷?のインパルスしか知らないかもしれません。
時にはまるで「東京タワー」のような油冷エンジン?のインパルスもありましたね。

でも私達アラフィフ世代には、関東では「ジスペケ」関西では「ガスペケ」とか呼ばれていたGSX400FSこそ「インパルス」なのかもしれません。

今回はそのインパルスのフロントフォークをOHします。

 

この時代、どこのメーカーも「アンチノーズダイブ」という装置をこぞってフロントフォークに装着していました。
アンチノーズダイブとは、ブレーキング時のフォークの沈み込みを抑制する装置で、このインパルスには「ANDF」なる名称の装置が付いています。当時、メーカーによってそれぞれ名称が異なり、AVDSだTRACだと色々あったんですが、90年代になると、いつのまのかそんなものは「死語の世界」になってしまいました。

このアンチダイブ、発想こそ良かったんですが、コーナーの突っ込みに逆に不自然な動きが嫌われ、最近では、取っ払ってしまう方も多くなりました。

余計な物?がある分、部品点数も多くなるのが世の常・・・
各部点検と計測をします。フォークオイルはヘドロになっていました。
スライドメタルも全て交換します。

各部を徹底的に洗浄し観察すると、アウターチューブに立て傷と、異物を噛みこんだ跡を発見。
比較的きれいだったインナーチューブの割りにオイル漏れが酷かったので、オイルシールの劣化とは別の原因があると睨んでいたのが的中してしまいました・・・
もちろん、新品部品なんて出ませんので、オーナーに承諾して頂き、細かいペーパーで入念に修正。
組みあがって、入念に試運転しましたが、漏れは完全に止まっていて、胸をなでおろしました。

 

そして、当時大流行したもう一つの機構、セミエアサスです。
やはり80年代のバイクはどのメーカーもセミエアサスをこぞって採用しました。
スプリングにプラスして、空気の反発力も利用しようと考えたみたいです。

 

これも、結構めんどくさい機構なんですよね・・・
フォークの空気圧が均等になるように、左右のフォークをパイプで連結しています。
これはカワサキ製の連結パイプですが、FXのE4辺りから採用しています。たしかCBXもそうだった記憶が。

 

元々、エアと併用が前提のソフトなスプリングレートの為、この部分の機密が悪くなると、フルボトムしてしまう車両も多かったです。
特にV-MAXなどの重量級車両ではエアの加圧が顕著に現れる為、マメな確認が必要です。

このOリングやフォークトップのOリングが劣化すると、エアか漏れてしまいます。
結構な数のOリングがありますが、全数交換して万全を基します。

最後に専用の空気入れを使って加圧します。0.3~0.6㎏とかなりの低圧ですので、普通の空気入れでは微調整が難しいです。
ほんの少しの空気圧の変化で、乗り味が激変します。この年代の車両は、一度エア圧を確認されたほうがよろしいかと。
何度か試運転して、ベストな圧力にセットしました。

この一連の作業も、もはや「死語の世界」となってしまいました。
でもこの80年代は各メーカーの熾烈な性能競争のおかげで、飛躍的に性能が向上した時代でもありました。
各メーカのエンジニアがプライドを賭け、熱く競い合った、本当にオートバイが一番輝いてた時代だったのかもしれませんね。

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