KH250用 350SS用 CDI点火装置試作
長らくご無沙汰しておりましたブログですが、よくよく考えると多忙とはいえ本年初でした(汗)
祈念すべき2023年度初?のブログネタは念願だったKH250用CDIキットの開発に一定の目途が経ったのと、製造元様から発表の許可も頂いたので、チョットだけ?リークさせて頂きます。
前々から何度もしつこい位言い続けている内燃機関の基本中の基本「良い圧縮」「良い点火」「良い混合気」ですが、当店のKHシリーズで「良い混合気」については大好評頂いているPWKキャブキットが、「良い圧縮」についてはエンジンをオーバーホールする事で完了します。後は「よい点火」を残すのみだったのですが、いかんせんこの点火システムについての開発については相当苦労させられました・・・
なにせKH250や350SSにおいては内燃機関黎明期の古典的なポイント点火だということは以前にもお伝えしましたが、このポイント点火は定期的なメンテナンスを必要とし、ひいては熟練の整備技術を要する部分もあり、当店に来店されるKHやSSの殆どが「調子悪い」というありさまでした。
イベントやツーリング等で故障して迷惑を掛けている車両の多くはKHやGT380などの2サイクルポイント車です。
Zに限らずほとんどの4サイクル車にはウオタニさんやリビルトシステムの発達という素晴らしい状態で、こと点火装置に関しては下手な90年代のバイクより故障が少なくなった気もする位です・・・
それ故、良い圧縮、良い点火、よい混合気さえクリアーすれば、元々超官能的なエンジンフィールのトリプルシリーズの良い所のみ楽しめるようになると信じて疑いません。
話はチョット脱線しますが、アフターマーケットのポイントレス化において、割合早い段階から4輪の世界ではあたりまえとなっていました。往年の日立フルトラやルミネーションの赤外線フルトラなどなど、またフルトラに限らず、ウルトラやワコーなどのCDIも色んなタイプが発売されていましたネ。
これはCDI用のいわゆる「ゴールドコイル」ってやつです。一世を風靡したシルバーコイルなんて死語の世界を懐かしむ御仁も多数いらっしゃるはずです。デスビレスにできる「同時点火キット」なるものまでありましたね・・・
この画像を見てピンとくる方は相当のLマニア、いえドラック(ゼロヨン)マニアでしょう(笑)
このアメリカ産CDIシステムが出た時は本当に衝撃的でした・・・
当時はすでにターボチューンが全盛で、一部熱狂的メカチューンマニアの燃料供給原は未だソレックスという古典的なキャブレターでした。キャブレターシステムでは、フューエルインジェクションの様な緻密な空燃比制御は不可能です。
ただでさえリッチな空燃比に加え、カムの作用角やオーバーラップが大きくなると、特に低速付近での燃焼が不安定になります。
元々の点火システムの経年劣化もあったと思いますが、このMSDイグニッションシステムには画期的な「マルチスパークシステム」というのが搭載されていました。CDIシステムと言うのはキャパシターディスチャージドイグニッション??の略で、誤解を恐れずに言えばポイント点火やフルトラシステムとは根本的に違うシステムです。フルトランジスターシステム(以下フルトラ)とは基本的な回路はポイント点火と変わらず、一次側回路の断続をポイントの代わりにトランジスターが無接点で回路の断続を行うシステムですが、CDIというのは、コンデンサーに貯めた電気を無接点のサイリスタ等の電気回路にて一気にコイルに放出するシステムです。
CDIシステムは高電圧の強力な火花が出る上、高回転での電力の追随性もフルトラ系よりも良く、高回転高出力だがプラグの被りやすい2サイクルエンジンで自己清浄作用も期待できるので相性は抜群とされています。
実際、純正点火システムも2サイクル車でフルトラシステムを採用している車種は、何年も先に進角制御で有利なデジタル化されたフルトラシステムを持つホンダMVXくらいしか思いつかないですネ・・・
ただそんないい事詰めくめの様なCDIにも火花の時間が短いという欠点があり、実際、低速域だけならCDI点火のKHより、ポイント点火の400SSの方が低速トルクを力強く感じましたが、高速域の伸びはやはりCDI点火のKHに軍配が上がります。
だからCDI点火の短い火花時間を解消する為、低回転時に複数回火を飛ばして結果的にフルトラに遜色のない点火時間を実現できたのがマルチスパークシステムなんです。
なにせ4サイクルといえど、既存の点火システムでは前出の低速域の被りに悩まされていたL型ドラックエンジンにこのMSDイグニッションシステムを組み込むとウソみたいにアイドリングが安定し、低速から高速まで一気に吹きあがるこの点火システムにみな心酔したものでした。
また、MSDイグニッションにはオプションでタイミングコンピューターというのもあり、多くが進角固定だったチューンドL型において、始動時は高圧縮エンジンと言うこともあり至難の業でした。
このタイミングコンピューターを付けると、自動で始動時は5度付近まで遅角し、高回転では40度以上までも進角する上、進角カーブまで変更できる優れものでした。今となっては閉角度制御なんて当たり前になりましたが、当時は救世主にさえ思えたもんです。
そんな素晴らしいMSDシステムの様な物をなんとかしてKHに搭載できないだろうか・・・と長年構想してきましたが、なかなか現実的には充電システムの問題や一般的なCDIは豪のロックバンドよろしくAC-DC方式という自ら交流を発生させてそれを使う、いわゆるフラマグ方式の為インナーローター方式のKHに流用はできません(涙)
もちろん、無接点化という意味では、すでにかの有名な?イギリス製のフルトラシステムは存在していますが、被りやすく、4サイクルの倍運動している?2サイクルエンジンにフルトラは相性がイマイチです。
それに元々から脆弱な充電システムのKHやSSに電力消費の多いシステムを組むと、灯火類を点けると調子が極端に悪くなるという症状に陥る恐れもあります(涙)
これをクリアーするとこちらの問題が・・・てな感じでどうしても完成には至りませんでした・・・
でもそこに救世主が現れました!
当初、コストの問題もあり中国や台湾の企業様にお願いしようかと悩んでいましたが、どうしても耐久性の問題や仕様変更の小回りが利かないなどの諸問題で頓挫していた所に、あるイベントで隣のブースだった企業様にご紹介頂き、国内の業者様で設計、製造して頂ける運びとなり、3Dプリンターなど最新の機器を駆使して頂き一気に試作品が完成する運びとなりました。
まだまだ量産化に向けての諸問題は山積みです・・・完全ボルトオン化や補給部品に拘る私のわがままの為、時間もかかりますが、KH専門店の意地にかけて必ず完成させます。高性能なPWKキャブレターと2サイクルエンジンに最もマッチしたCDI点火が完成すればそれはもう誰もが気兼ねなく官能的なトリプルサウンドを楽しめ、故障知らずのKHも夢ではなく現実になります。
PWKキャブの供給不足など、皆様には多々ご迷惑をおかけしておりますが、温かい目で見守って頂ければ嬉しく思います。
良い圧縮 良い点火 良い混合気
内燃機関に関わる方でなくともタイトルの文言を耳にした事がある方は多いと思います。
当店は主に旧車とよばれる古い車両を主に扱っていますが、エンジンという内燃機関を診断する上で、それが現代のプリウスであろうが全く変わりません。
トヨタディラー勤務時代、すでに修理現場から離れ、販売やマネージメント業務が主になっていた私、それこそプリウスのエンジン不調で入庫されたお客様に若手のメカニックが一生懸命タスキャン(エンジンマネージメントの診断機)とにらめっこしながら格闘していましたが一向に調子は良くなりません・・・
そのプリウスは走行距離が22万キロというのもあり、私は「ダイアグノーシス(自己診断)ばっかりに頼っていて直る訳がないやん・・・」と内心思いながらもその職人気取り小僧系メカニックにプラグ確認したか?と尋ねると、奴はすかさず「マネジャーの時代と違って、今の車、プラグなんて悪くなる事なんてまずありませんよ!」と言い切ります。
確かにキャブからフューエルインジェクションになり、KHのようにプラグが被るなんてことはまずありえません。
ましてや最近のDI化やエンジンルーム内レイアウトの複雑化により、イリジウムプラグなどの高耐久プラグが純正採用される事が多く、プラグ交換なんてもはや死語の世界となりました。
それでも私は22万キロという走行距離が頭から離れなかったので、部下のプライドを傷つけないよう気を使いながら(笑)プラグ交換をお願いすると、見事に調子がよくなりました。彼は電子制御にばかり気をとられ、内燃機関の基本中の基本を見失ったという例です。
あくまでインジェクションシステムも点火マップによる三次元閉角度制御も良い点火や良い混合気にする為のものでしかありません。
毎度のごとく前置きが超長くなりましたが、まさに今回そのまんまの落とし穴に陥りました(涙)
それはこの度、当店でエンジン修理を承ったKH250なんですが、クランクのリビルドはもちろん、M/T関係や腰上もWPC処理を施し、入念にエンジンを組んだ車両なんですが、何故か試運転すらできない状況です。
もともと焼き付いての入庫でしたので、当初の状態が解りません・・・
問診の段階で、「調子は良かったのですが、高速道路でロックした」というキン〇マが縮み上がるようなお話です(汗)
前の状態が解らないのでとりあえずキャブレターもキースターさんのOHキットでほぼ中身は新品に交換します。
やはりこの年式になるとジェットニードルはもちろん、相手側のニードルジェットの摩耗による不調も多いので、このキットには本当に助かります。精度も日本製とあって他のヤ〇オク等の海外製のキットとは信頼性が違います。
価格もセット内容からすると格安なのですが、ここ業販してくれないんです(涙)
送料や部品利益を工賃に上乗せする事もやりにくい昨今、同業者はみんな口を揃えて嘆いています。
電子制御噴射のEFIなどと違い、古典的な燃料供給装置であるキャブレターはこの中身を更新し、油面をキッチリ合わせてあげればまず問題ありません。
車両に装着し試運転すると、中速から高速は本当に見違えるようにキレイに吹けるようになったんですが、低中速が全然ダメです(涙)
お客様の「調子が良かった」という話が物凄くひっかかります・・・
「良い圧縮」に関しては今回シリンダーなどはOSピストンを入れ、新たにボーリングしているので除外できます。
となると残るは「良い点火」しかありません。
本来、KH250はコストの兼ね合いか?兄貴分のKH400のCDIとは異なり、古典的なポイント点火です。
ただ、この車両に関しては、社外のフルトランジシター点火に換装されており、無接点式となっています。
まさかこのシステムにこれだけ悩まされるとは当初思ってもみませんでした。
ボ〇ヤーのフルトラシステムに関し、過去の経験から正直あまり良いイメージがありません・・・
元々、2サイクルにフルトラは相性が良くないんですよね・・・4行程で一回点火する4ストに比べ、2行程で一回の2サイクルはほぼ倍の電気を喰います、それにコイルへの立ち上がりなどもコンデンサーに蓄えておけるCDIシステムの方が高回転での追従性がいいので、2サイクルエンジンはフルトランジスター方式よりCDI方式が採用される事が多いのです。
元々フラマグ式ではないポイント車を無接点化するという意味ではフルトラ方式の方が断然楽なので、2サイクル車用にフルトラキットがあったりします。機械的に回路をポイントで開閉するポイントは常に開運動をしていますので、摩耗からは逃れられません・・・
それゆえ無接点化の恩恵は計り知れないですが、いかんせんそれ用に電力需給の設計がされていませんので、電気が供給より消費が上回る状況が続きバッテリーが電力不足に陥る、つまり家庭でいえば安月給の亭主に浪費家の嫁ならばいずれ家計は破綻するのと同じ理屈です(汗)
またボ〇ヤー社のこのキットはナント常時点火という普通では考えられない点火方式、つまり、どの気筒にも同じタイミングで火が飛ぶので、1番から3番までどのプラグコードを入れ替えても普通に走るという不可解な装置です。
でもそれはただでさえ相性の悪いフルトラに無駄火が飛びまくるという代物です・・・
そう、一昔前に世間の男どもを震え上がらせた、かのアニータ嬢よろしく浪費は凄まじい事は容易に想像できます(笑)
ただ、このシステムでも充電系統に問題がない車両であれば昼間に限っては問題なく走れてしまうのも事実です。
だからオーナーは破綻ギリギリの状態でも調子よく走っていたのかもしれません。
ではなぜエンジンや補器類、特に今回はステーターコイルの配線やメインハーネスも新品にしているのに電力需給がうまくいかないのか?
恐らくレギュレター&レクティファイヤーをICタイプの一体型に変えたのが原因のなのか?コイルのΩ数の問題なのか・・・果たして謎です。
とにかく不調の原因を突き止めたいので、古典的な方法ではありますが、一度点火装置そのものをポイント式へとも戻してみます。
すると今までの不調がウソのように下から上まで一気に吹け上がり、中畑清よろしくゼッコーチョー!!
やはり原因は点火装置にあったんですね・・・
どうしてもポイント式には調整はつきもので、それを嫌うオーナーが多いのも事実ですが古典的故、単純なポイント点火は調子は悪くなってもブラックボックスの電子部品のように0か100って事にはなりません。
だた、ここ最近、信頼できるポイントやコンデンサーの入手が困難になり、煩わしいポイント廻りがより一層難儀になってきたので悩む所です。とにかくブラックボックスであるイグナイターユニットがいきなりパンクする事もあるので、大事を取って新品のボ〇ヤーシステムを取り寄せ交換するも症状は全く改善しません・・・
レギュレターの制御電圧との相性がよくないのか?ほとんど迷宮入りしそうな程悩まされます・・・
そんな矢先、ヤフオクを見ていて目から鱗の商品を発見!
それはタイト〇ニックというあまり聞いたことのないメーカーですが、ハーレーなどでよく装着されるダイナSの様な出で立ちで、説明文にも「各気筒独立に点火します」と謳っているではありませんか!
別のお客様が装着して凄く調子が良くなったと聞いた事があったので即落札。
ところがやはりこの手の商品には・・・
このシグナルローターみたいな物を画像のようにクランク軸(インナーローター)に取り付けるのですが、本当にメーカーは車両に一度でも実際に取り付けたことがあるのか?はなはだ疑問です・・・
大きさが全く違うのでセンターが出ないのはもちろん、ノックピンすらありません・・・
芯がでないとそれこそ「偏心」してしまいエアギャップなんてあったもんじゃありません・・・
しかしこんなのでみんな、どうやって装着したのか本当に疑問です。
ダイナSのようにタイミングライトを内蔵しているようですがイニシャルの位置決めが素人ではまず無理でしょう・・・
こと、ここの部分に関しては圧倒的にボ〇ヤー社の方が造りはいいですね・・・
しかし前出のお客さんの電話で「凄く調子が良くなった」という言葉が取り外しをためらわせます・・・
センターが出んなら出んで、出るようにすらやええ と困った時の駆け込み寺「カスタムショップノムラ」の野村君に「センター出しのジグ作って~」とお願いします(笑)
NC旋盤をも自作してしまう?程の変態の彼にかかれば、センター出しのカラーなど朝飯前です。
アっちゅう間にカラーが出来上がりました。
画像では解り難いのですが、二分割にし、下部のカラーでセンターはバッチリです!
しかし、こんな大変手のかかる取付作業を電話のお客さんはどうやってやったのでしょうか?物凄く疑問が残ります・・・
そして満を期してキックを蹴るも「パン!!!」と恐ろしいバックファイヤーを響かせまともにアイドリングすらしません。
オイオイこれ・・・なんか聞いたことのある恐ろしい音で、それは整備学校で初めて組んだL型6気筒を思い出します。
点火順序間違うてへんか?
でも間違いなく結線をしましたが、よくよく見ると最初からレフトとライトの色が間違っているではありませんか・・・
どこの国の製造か解りませんが、かの国が頭をよぎります(涙)
何とか配線を入れ替えてエンジン始動です。
点火順序が違ってバックファイヤーするのは独立に火が飛んでいる証拠です。やはり明らかにボ〇ヤー製のフルトラより力強いです。
ただ、やはり低回転で失火状態になります・・・
この症状は先程のボ〇ヤー社と同じ症状なので点火システムに問題があるわけではなく、車両側に起因すているはずです。
しかし、販売されている方に申し訳ないですが、取付けがこんなありさまの製品に耐久性など期待できるはずがありません・・・
後から考えるとあたりまえの事で、簡単そうに思えますが、ここに至るまで、かなりの労力と経費を浪費しました・・・
最終、やはり現段階では一番信頼できるノーマルのポイント点火に戻すという結論に達しました(涙)
「良い圧縮」はエンジンOHで、「良い混合気」は250用もうすぐ発売のPWKキャブキットが・・・
後残すは信頼できる点火システムのみです。現在構想中で、忙しさのあまり頓挫しているトライシクル特製CDIシステムを早く市販化する事がKHやSSを快適に乗る為には必須だという事を思い知らされた今回の一件でした・・・
悲願であったPWKキャブキットはほぼ納得のいく出来栄えです。本当にいいもの、いえ自分のKHに取り付けたいと思える商品以外は絶対販売致しません。まだまだ構想段階で発売には程遠いですが、本当に重要な部品ですので市販化まで今しばらくお待ち下さいませ。