トリプル全車共通 強化キックスプリング
カワサキトリプルシリーズ全車種共通SWP-B鋼 強化キックリターンスプリング。
かねてから純正部品が欠品状態だったトリプル全車種共通のキックリターンスプリング純正部品番号92081-021相当を再制作いたしました。
前回製作したロット分は俗に言うピアノ線、SWP-A鋼にて製作していましたが、より負担の大きいH2などへの使用も考慮し、今回のロット分から、ヘタリにより強いSWP-B鋼にて製作しております。
恐らく何十年も使い込まれた純正スプリングから交換すればSWP-A鋼でも十分ですが、そうコストに差がでないようにメーカー様にも御協力頂きました。さらにフォークスプリングに採用予定のSWP-V鋼も考えましたが、2~3mm以下の線形のスプリングなら、せん断応力においてもSWP-B鋼の方が適切なようです。
10年程前、ほとんど自分のKHの為に生産したリターンスプリング、KHなどのミドルだけでなく、H1やH2マッハも共通部品だった為、速攻で完売御礼!その後、長らく欠品状態だった当店のリターンスプリングですが、すでに他のショップ様やヤフオク出品者様が同じようなリターンスプリングを製作してくれている為、再生産をためらいました・・・
しかし「腰下」という心臓部に奢る部品なので、バネ乗数や線形を変更せず、純正に忠実かつ、ヘタリ難い強化品をどうしても作ってみたかったんです・・・
純正よりバネ乗数を上げた強化品も考えましたが、現在のスプリング用の素材は、当時より格段に良くなっていますし、私のKHで10年間実際のテストを行っており、SWP-A鋼でも十分な耐久力を証明できているので、ほとんど自己満足の領域かもしれません(笑)
もちろん、今回の製品も某大手メーカー様に納入実績のある国内工場にて企画、生産しておりますので、安心して愛車の心臓部にご使用頂けます。
マッハ全車共通 SWP-B鋼 強化キックリターンスプリング 税込み価格 5180円(税抜き4800円)
Mr.ジェットスキーのポート考。
今日はMr.ジェットスキーこと、元川崎重工のレジェンド、F氏が遊びに来てくれました。
「ジェットスキー」とはカワサキの商標ですが、今や水上バイク全般をジェットスキーと呼ぶ程、すっかり定着した名詞となっています。
そのジェットスキーの歴史の中で、絶対に外す事のできない方がこのF氏です。
ジェットスキーの黎明期、ワークス勢と共に世界各国を股にかけ、自らチューンしたジェットスキーを駆り、チャンピオンにもなられた、ジェットスキーの父といっても過言ではないこのお方は、私にとっては「神」のような存在であり、またアレコレと私を叱ってくれる良きお師匠さんでもあります。
ジェットスキーの黎明期は市販モデルに、2サイクル三気筒が多く、SSやKHと共通な点が多いのです。
それもそのはず、二輪と同じ明石工場で設計、製造されていたので、汎用機事業部と二輪事業部で情報交換などよくしたらしく、師匠の周りには、かの有名なマッハやZ1の開発関係の方々など蒼々たるメンバーがズラリ!当時の開発秘話など私にとって興味深々なお話ばかりで、ただただ関心するばかりです。
またF氏はジェットスキーのワークスレーサーの開発も手掛けていた為、2サイクルエンジンのチューンにおいて凄まじい程の経験と知識を持っておられます。
せっかくコーヒーを飲みにきて頂いても。私の質問攻めで、ゆっくりくつろぐ暇もありません(笑)
今日は、掃気ポート、専門用語でスカベンジングポートと呼ぶらしいですが、その掃気ポートについてミッチリ講義して頂きました。
シュニューレポート?なる掃気ポートの曲がりや吹上げ角などなど、すべてが「目から鱗」なお話ばかりで、今までのポート研磨においての私の悩みや疑問などすべてが腑に落ちたというか、納得しまくりで、時間などアッと言う間に過ぎてしまいました。
スキッシュエリアやデトネーションに始まり、点火時期の高速遅角などなど、2サイクルを極めた者だけが知る世界に、私もまだまだヒヨッ子だという事を思い知らされます・・・
この吸気ポートの通称「のどちんこ」はリングの飛び出し防止の為にある事くらいは知っていましたが、排気ポートと掃気ポートとの関連や、主掃気ポートと副掃気ポートの役割など、マッタクもって目から鱗で、自分では昔から意味も解らず研磨していたポートですが、よ~く考えると、師匠の理論に知らず知らず近づいていた様で、少し嬉しかったりもしました。
そんな凄い師匠ですが、何故か?超の付くホンダファンで、ホンダSシリーズに関しても、日本一といっても過言ではないSのオーソリティーで、ウチのお店のすぐ近くで知る人ぞ知るSショップを営んでおられます。それはもう文句の付けどころのない究極のレストアを施されたS800がズラリと並ぶSマニアにとってはたまらない空間です。
http://s800garage.ko-co.jp/e208742.html
400SS トラブルシュート
400SS続き その2
ミドルマッハの400SSの点火装置はKH400などのフラマグCDIとは異なり、バッテリー点火、いわゆるポイント点火とよばれる原動機黎明期からある、最も古典的な点火方式です。
ポイント点火は、調整こそ必要ですが、構成部品は単純ですので、修理は意外と簡単?です。
カワサキトリプルシリーズはこのポイント点火と、無接点CDIの二種類があります。
この頃はCDIシステムの黎明期とあって、下手すると毎年システムが変更されたりした事もありました。
初期型KA500SSは当時では最新鋭のCDIでしたが、車のようにコイルが一個で、ディストリビューターを介して各気筒に二次電流を分配していました。デスビがあるので、ローターとチップでかなりロスが出るし、リーク問題等もあり、H1Bでは古典的なポイント点火に戻ってしまいました。
H1Dになり、またまたCDIになったと思えば、H1EやFでそのCDIシステムが変更になり互換性もありません。
これだけの点火バリエーションがある機種も珍しいのですが、おそらくコストの問題と、輸出モデルにおいて、細かい調整が好まれない北米モデルにはメンテフリーのCDIシステムが採用され、コストも安く、信頼性の高いポイント点火は、主に国内向け車両に採用されたのかもしれません。
前置きが長くなりましたが、この400SSはポイント点火と言いました。
ポイント点火は煩わしいポイントギャップの調整があるので、世間ではあまり歓迎されていませんが、CDI点火のような点火ユニット、いわゆる「ブラックBOX」がありません。
CDIやフルトラはメンテナンスフリーですが、ブラックボックスがあるので、ユニットがパンクすればもうどうしようもありませんが、ポイント式はエンジンが不調になったとしても、取りあえず走る事が可能です。
今回は、ポイントもコンデンサーも交換されたそうですが、エンジンは不調のままです。
エンジン本体やキャブも点検するも、異常は見受けられませんでした・・・
単純な物ほど奥が深い・・・
この言葉が頭をよぎります。
五感を研ぎ澄まして再度各部を点検します。時には匂いを嗅いたり、手で感触を確かめたりと旧車の修理にはやはり「勘」も必要です。
すると、ポイントの開閉運動に違和感を感じました。なぜかポイントが閉じている時間より、開いている時間の方が長いという、今まで経験したことのない動きをしてます。
ここで、ドエルアングルテスターの登場です。ドエルアングルテスターなんて、もはや修理現場では死語となった計測機器です。
プロの方でも、整備士の講習会とかでしか使ったことの方も多いと思います。平成に入ってからは軽貨物でさえフルトラ化の波が押し寄せ、よほど古い整備工場でしか持っていない化石のような機器かもしれません・・・
ドエル角とはポイントは閉じている角度の事で、ポイント点火車にとっては重要な角度です。
ドエル角とポイントギャップは密接関係なので、詳しい話はここでは割愛し、誤解を恐れずに言えば、ポイントギャップが合っていれば、だいたいのドエルアングルは問題ないはずです。
今回、このSSも、ポイントギャップは入念に合わせたハズなのに、ドエルアングルが基準値になりません・・・
もしかしてポイントカムかも・・・
お客様の当初の問診で、「納車されて少しの間は調子が良かった」の言葉に惑わされたのかもしれません。
上記の画像でも解るように、外からパッと見では、内部まで見えませんし、外観上は異常も見受けられません。しかし、こんなドエル角になるにはポイントカムが「ハート型?」にならないと不可能です。
再度、ポイントヨークをバラし、ポイントカムを外してじっくり観察すると、ビックリ仰天!
画像では解りにくいのですが、ヒールとの摺動面が著しく虫喰い状に偏磨耗しており、あきらかに段差ができてしまっているではありませんか!
これでは、ポイントが正常な動きをする訳がなく、ポイントやコンデンサーを交換しても調子が出なかった理由が合点します。
「コイツやったんや・・・」
不調の原因さえ特定できればコッチのもんです。ただ、悲しいかなこいつも、もちろんメーカー在庫なんてある訳がありません・・・
こうなれば、中古部品を探すしかないのですが、中古を使うと、間違いなく同じ事がおこります。
今回はおそらくポイントカムの潤滑をしているフェルトのメンテナンス不良が原因ですが、
私もまさかベーグライトでできたポイントヒールと、鉄製のポイントカムが喧嘩して、鉄が負けるなんて想像もしていませんでした。
何年も前にポイントカムに「気休め」でWPC加工を施した事を思い出し、倉庫を家捜しする事しばし、カムを見て昔の記憶が蘇りました。何年か前、このWPC加工済みポイントカムを15000円でヤフオクに出品しましたが、高すぎたのか、まったくノーコール(涙)。WPC加工代も決して安くはなかったので、安売りするくらいなら・・・と自身で保管していました。
こんなパーツに高価な加工を施しても、市場では受け入れられない・・・と少しガッカリしていたのですが、やはりこんな部品こそWPC加工の恩恵を受けるんだと今回確信でき、嬉しく思えました。オーナーにもこの事を報告し、WPC加工済みポイントカムへの交換を快諾して頂きました。
キック一発でトリプルは目覚め、キレイな三重奏を奏でています。
旧車には高価絶大の3sqで製作したエンジンアースも追加し、試乗しました。ポイント車らしい、
中低速のトルクが太くて非常に乗り易く、結果として速いマッハになりました。
取りに来て頂いたオーナー様にも試乗して頂き、「怖いくらいの加速だった!」と言う最高の褒め言葉を頂きました。
今回、やはり「ヤフオク」という一見、便利で安そうな購入をされ、結果的に高くついたかもしれません・・・
ミドルマッハはどうしても旧舎会?系のお兄さんなどに人気で「音だけ」と揶揄される事が多いですが、キチンと整備すれば非力と言われるKH400であっても、そこは腐っても2サイクル400cc、遅いハズがありません。
今回、見た目などは、マッタク変わらない本当に地味な依頼内容でしたが、唯一違うのは以前とは比較にならない「信頼性」です。
私も、20年程前、遠方のミーティングなどに参加する時、テールカウルの中は工具で満載はもちろん、下手すると、当時の彼女(現在の嫁さん)に「車でついてきてもらう」という事が当たり前でした(笑)
しかし、よ~く考えて頂きたい、マッハやKHが新車で売られていた当時、テールカウルに工具を満載して、車で後ろについてきてもらわないとツーリングは不可能だったでしょうか?「旧車だから」の一言で、片付けてはいないでしょうか?
フルオリジナルだ、当時物だとかを自慢する輩を否定はしませんが、完全な「整備」を施し、現在のパーツを流用する事で、ロングツーリングはもちろん、通勤にだって使う事は不可能ではありません。
思い入れ、憧れてやっとの思いで購入した旧車だからこそ、最低限、動力性能くらいは「当時物」にしてあげて欲しい・・・
新年明けましておめでとうございます。第一号は他人事とは思えないマッハ。
新年明けましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願い致します。
今年一発目は、年末ギリギリに納車した、珍しい国内物の400SSマッハの修理記事でスタート!
一号なので、少し長めの内容ですが、最後まで見て頂けますと幸いです。
右側三本出しバラチャンとセブンスターキャストが決まった珍しい400SSマッハ。
聞けば、「ヤフオクで購入したが、調子が悪く、自分で修理したらエンジンが掛からなくなった」という内容。
・・・・・・コレは修理屋にとって一番やりたくない仕事かもしれません。
人が途中まで修理しかけて投げ出した場合、自分で部品をバラした訳ではないので、倍以上の時間が掛かります。
ましてや今回、ご自身で配線をやり直したまではいいのですが、「純正のカプラーは切断し、ギボシで作り直したが、電装関係もおかしくなってしまった」といいます(汗)
純正のカプラーを捨て、配線も変えてしまうと、配線図が役に立たなくなります・・・
やはり、近所の修理屋さんでは断られたらしく、このブログを見て、藁にもすがる思いで当店に電話された様です。
もちろん当店でもやりたくない作業ですが、瞬時に18歳の時の記憶が頭をよぎります。
そうです、私も何を隠そう、マッタク同じ失敗を整備士学校に入学した直後にやらかしました。
自分で配線をやり直そうとして、途中で訳が解らなくなって、エンジンが掛からなくなってしまったんです・・・
もちろん、当時、配線図などあるわけなく、それにもましてこの当時のカワサキ車は、赤に白を繋ぐとか、現在の常識では考えられない配線方法です。見知らぬ土地で唯一の足だったKHの故障は、私にとってそれは死活問題でした。
当時はネットなどもちろんありませんから、電話帳のバイク屋さんにかたっぱしから電話しまくったんですが、
「そんなもん、人の失敗のケツ拭きなんかできるか!」と怒鳴られたバイク屋さえありました・・・
やっとの事、各務ヶ原にあるカワサキグリーンショップ(現RSオオワキ様)になんとか頼み込んで修理を受けて頂きました。
あの時、修理から上がってきたKHのエンジン音を聞いたときの感動と御恩は今でも忘れる事ができません・・・
だから、他人事とは思えなかったんです・・・
素人さんにしては番号を打つなどして、それなりに努力された後は見受けられますが、
配線すべて黒というのはいただけません・・・
その時はいいですが、純正の配線を無視して作り直すと、後から見た別の人間には、何が何んだかマッタク解りませんし、なにより配線図が使い物にならなくなります。もし、旅先などでトラぶってもまず見てくれる修理屋はありません。
だから、私達は純正に拘ります。お客様がもし、遠方でトラぶったとしても、配線図がみれる修理屋さんなら、旧車に強くないお店でも修理ができます。配線図なんてそれこそFAXでだって送れちゃいますから。
ご自身でコンデンサーとポイントも交換されたそうですが、調子は良くならかったらしく、配線では?と思って配線に手を出したそうなので、まず徹底的に現状の把握とトラブルシュートを行います。
良く見ると、コンデンサーの端子を繋ぐ位置が違っていたりはしていましたが、圧縮もあり、不調の原因はその辺りではなさそうです・・・
トラブルシュートは一つ一つ着実に殺して行き、ちゃんとした原因を突き止めないと絶対に「再修理」が待っています。
未だ「コレや!」という内容にはたどり着きません・・・
コイルも社外の強化品に変更されていますが、抵抗値を確認しないと、フルトラ用の3Ω程度のコイルを使用すると、いずれコイルがパンクします、それ以前に取り付け方法がビニールテープにタイラップという状態です・・・
コイルは熱を持ちますから、ブラケットは固定の役目だけではなく、熱をフレームに逃がすという役も兼ねており、これでは熱が逃げず、抵抗値があっていたとしてもパンクのリスクが伴います。
私も過去はそうでしたが、どうしても「強化品」という響きに弱く、基本的な事がおろそかになりがちです。
ただ、キチンとツボさえ押さえれば、強化コイルに換装すると、ジェットの番手が変わってしまうほど効果があるのも事実です。
今回はまず、全て純正に戻し、発電関係や配線関係、並びに充電関係のリフレッシュを行い、信頼性の大幅な向上を狙います。
メインハーネスはもちろん、ジェネレターコイルからの配線、バッテリーリードまで引き直し、外されていたヒューズBOXも復元します。
ヨークはブラストし、配線もすべて引きなおし、リビルドが完了したジェネレータ
見た目も気持ちいいですね!
メインハーネスだけ引きなおしても、バッテリーリードや、ジェネレーターからの配線も引きなさないと効果が半減です。
この一連の作業を行うと、ヘッドライトはもちろんメーターインジケーターの明かりまではっきり違いが解ります。
人間で言うと大動脈を交換したような物ですね。
せっかく発電所や送電線をリフレッシュしたのなら、変電所まで更新したいですよね・・・
以前は純正他車流用でしたが、今回は一体型高性能ICレギュレターを使います。
なるべく純正の雰囲気を崩したくないので、冷却性は多少犠牲にしますが、バッテリーケースに小加工して取り付けました。
レギュレターとレクチファイヤーが一体となるので、スッキリしますし何より高性能IC内臓ですので、MFバッテリーの使用さえ可能です。ただ、マッハ系の充電システムは元々脆弱な上、セルモーターなどの電力消費の大きな物もありませんし、電圧制御も緻密になり過充電にもなり難くバッテリーの持ちが比較的に良くなると思うので、通常タイプの液入りバッテリーで良いと思います。
グチャグチャになっていてた配線も、ギボシをハンダ着けするなどして信頼性を向上させ、
灯火系統も全て点灯させ修理完了、国内物のみ付いていた速度警告灯も配線を繋ぎ直し点灯させました。
当時は、毛嫌いされた速度警告灯も、今となっては国内物の証ですので、点灯させるように修理しました。
電装関係の修理は予定通りに完了しましたが、肝心のエンジンが不調のままです。
圧縮はコンプレッションゲージの数値が三気筒とも基準内でしたので、不調の原因は混合気か点火しかありません。
キャブが二次エアを吸っている訳でもなさそうですし、キャブ各部を点検するも異常はなさそうです。
やはり点火が原因の可能性が大ですね。
次回へと続く・・・
500SS KH400用 S45C特殊ヘッドナット
500SS KH400用 S45C特殊ヘッドナット
1台分 12本 12960円(税抜き12000円)
特殊な形状の400SS、500SS、KH400用のヘッドナットをS45C材にて制作いたしました。
このナットはよくも悪くも目立ちます。いくらキレイにエンジンをブラストしても、ヘッドナットがキレイじゃないと台無しです。
また、いくらスタッドボルトを強化品に替えても、ナットがそのままではきちんとトルク管理ができません・・・
見た目や耐候性ににも拘り、純正のユニクロメッキの色に近く、耐候性もユニクロメッキより高い三価クロメートメッキをベーキング処理を施した上で施しております。強化スタッドと合わせてご使用下さい。
500SS KH400 トリプル専用 特殊ヘッドナット制作しました。
スタッドボルトに次いで、マッハ用、特殊ヘッドナットを制作しました
H2やS1(750SS、KH250)には採用されず、 H1とS3(500SS、KH400)などに採用された特殊なナットです。
500SSとKH400は共通部品ですので、どちらの車種でも使用OKです。
エンジンをレストアする過程で避けて通れないのがこのナットです。
せっかくシリンダーやヘッドをガラスビーズなどでブラストしてキレイにしても、
マッハシリーズではこのヘッドナットが結構目立つ為、コレが汚いとナットが浮いてしまいます。当店でも、純正の特殊ナットを再鍍金して再使用していました。
再鍍金の仕上がりを決めるのは入念な下地処理に尽きます・・・
サンドブラストで下地を整え、ユニクロメッキをかけるんですが、
やはり何度も再使用してくると、表面がザラついてしまい、メッキの仕上がりを悪くします。
それに純正の特殊ナットは柔らかく、ネジ山が緩くなった物も多く見受けられます。
いくらスタッドボルトをクロモリなどの強化品に替えても、ナットも同時に替えないと意味がありません・・・
この特殊なナットの制作には相当手間が掛かりました・・・
もちろん純正ナットは随分前に製廃になっているので、どうせ造るなら少しでもいい物をと思いSS鋼より強度のあるS45C材で製作します。
まず、大き目のS45C材のボルトのネジ山を全て削ってから、ボルトの中心に穴を開け、その穴にネジを切り、さらにボルトの頭を17mmに落とすという二度手間、三度手間を掛け製造します。
強度的には、シリンダースタッドと同じSCM鋼が理想ですが、SCM鋼とユニクロメッキの相性がよくないんです。
このナットは外からよく見えるので、どうしても純正の雰囲気を崩したくありませんでした。
だから「ユニクロ色」に拘りたかったんです。
ただ、ユニクロメッキはコストは安いのですが、耐候性がイマイチです。
どちらのメッキ処理にしようか迷ったのですが、見た目が殆ど純正のユニクロメッキとほぼ変わらず、若干でも耐候性のある三価クロメート処理を施す事で、耐候性と見た目を両立しました。
強化スタッドと組み合わせる事により、より強靭にトルク管理する事が可能です。
今後、展開しようと思っているハイコンプ仕様などにも対応できます。
何でもかんでも強化すればいいと言う物でもありませんが、エンジンを開けたなら、
スタッドとナットは精神衛生上、新品に交換しておきたいですよね。