兵庫県加古川市のガレージ トライシクルのブログです Tag Archive | KHリプロパーツ

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2024年締めにあたり・・・トライシクルでエンジンを組むという事。

今年もいよいよ残すところ僅かとなりました。
最近よく「ブログ楽しみにしています」という身に余るお言葉を頂きます。
毎回、好き勝手に言いたい事を書いてる私にとって本当に有難い事です・・・

あまりこういった事は公表はしたくはないのですが、トライシクルでエンジンのオーバーホールをして頂いている方に報告も兼ねての内容です。
このブログでも口が酸っぱくなるほど言い続けている「部品がない!」というワードですが、本当に嫌になるほど補給品は皆無です。
せっかくエンジンを開け、各部計測をし、要交換部品を発見しても新品補給品はないので、「中古良品」を使うか、「見なかった事」にするしかありません・・・
特にヤフ〇ク等の「中古良品」ほどタチの悪い物はなく、何度もエッらい目にあわされてきました・・・

 

 

これはクランクの右先端部ですが、殆どの車両はこの先端のオイルシールと接触する部部が腐食や擦りキズがあり、これで本当に一時圧縮が保たれるのか不思議です・・・
材質が弱いのか、オイルシールのリップの当たる部位はツメで引っかかる程の傷がある事が殆どです。

 

 

折角、ベアリングやセンターシールを交換して入念に芯出しをしても、こんな状態のカラーで組みたくはありません・・・
よくお客様からラビリンスシールにした方がいいか?とか、雑誌に掲載された記事を見てその様な加工ができないかと問い合わせが多くありますが、そらやらんよりやった方が絶対ええに決まってます、が、しかしである!この辺りの所をちゃんとやった上でせんとそれこそ本末転倒です・・・
センターシールだけ半永久的に使えてもサイドシールはゴムのままやし、サイドシールの方が断然弱いのにどないやねん?と首をかしげたくなります・・・
エンジン加工に湯水の如くコストをかけられる方は稀で、やはり優先順位を間違えてはいけません。
一点豪華主義ではエンジンの調子は絶対にでません・・・やはり補器類も含めたトータルで考えないと意味がないんです。
何台も他のお店で「フルOH」をしたというエンジンも開けましたが、この箇所がちゃんとしたクランクを見た事がありません・・・
新品部品は出ないので、おそらく前出の「見なかった事」にしているんだと思います・・・

 

 

ただ、幸いにもこの部分は取り外し可能なので、汎用旋盤で比較的簡単に制作する事ができます。
中にはバラせる事を知らずにそのまま見て見ぬふりをして組んでいるショプさんも多いですね。
鍛造品であるクランクの素材との相性などはメーカーの開発さんレベルでないと判りませんが、
自分の知識で出来る限りの素材を吟味して製作しているつもりです。
何よりキズまみれのそれより絶対いいハズ!と信じて製作しています。

 

 

これはクラッチのプシュロッドシールとプッシュロッド短ですが、ココも殆どの車両がシールとの接触面が爪で引っ掛かるほどのダメージを受けています。これも比較的簡単に制作可能ですが、常に力のかかる部分なので大事を取ってSKD11という素材で制作しています。

 

 

嫁と畳は新しい方がええ。って昔のエラい方は言ってますが(笑)新品に勝るものはありません。
この様な部品は組んでしまうと外からは見えません・・・
見えなくなってしまうからこそちゃんとしておきたいと思っています。何年か後、ウチで組んだエンジンを誰かが開けた時、その人間がどう思うかを常に考えてエンジンを組んでいます。
雑誌で取り上げられる様な華やかな物でもありませんが、優先順位を間違わない様、常に自問自答しながら日々悩む毎日です。

 

 

これは今後製作予定?のトリプルの鬼門、チェンジシャフトロッドです。
例によってここもオイルシールとの接触面が摩耗し、M/Tオイルが漏れます・・・
ここからオイル漏れをしていないトリプルは本当に稀で、ガレージにオムツは必須です。
やはりこの頃はまだイギリス様式の「右チェンジ」の考えが抜けきれず、シフタードラムが右側にあるマッハ系全ての泣き所で、W1SAよろしく長いチェンジシャフトで、むりくり左チェンジにしていたんでしょうね・・・実際、H1には右側にもシャフトが出ていますから。
右から長いシャフトで繋げている構造上、絶対に回転方向以外の力がかかり、ただでさえキズまみれの接触面に縦方向の力も加わりオイルが漏れます(涙)
Z辺りから北米を意識してか、最初から左チェンジありきで設計されているので、「新世代」のエンジンといえます。
Zどころか下手するとFXと同世代のKHですらマッハの時代のままの一世代も二世代も前の設計で、本当にダメですね。
このすぐブリブリになるチェンジシャフトは絶対に新たに作りたいのですが、先端のチェンジリンクが付く部分は転造と言ういわゆる「ハンコ」のようなもので制作するんですが、転造は大量生産には向ていますが、金型を新たに作る必要があり、少量生産には向きません・・・
なんとかスプラインを切る工場様で制作できる見込みは経ちましたが、コストの問題で頓挫しています・・・
当時物のレプリカなら少々高くても売れるんでしょうが、こんな見えない部分にいったい何人の方が買ってくれうのだろうか?と毎度の「棚の肥やし」理論で未だ制作には至りません・・・今の所、私も見て見ぬふりをするしかないのが現状で、本当にはがゆい思いをしています。

 

 

これらの部品は基本、非売品です。この他にも無い物は多数ワンオフで製作しできる限り交換する様にしています。
せっかく数あるショップの中からウチを選んで頂いたお客様に「専門店」の値打ちもないとダメですもんね・・・
ウチは基本トリプルしかやりません。っていうとカッコよく聞こえますが、実はトリプルしかできないんですよね・・・
有難い事にたまにフォーワンとかの依頼もありますが、丁重にお断りしています。何故なら専門でないので知らない事がいっぱいあるからなんです。
一部例外を除き、何んでもできるショップって結局の所、何んでもできないと思うからなんです・・・

トライシクルでエンジンを組む。という事ですが、まだまだ自分自身で納得がいくエンジンには程遠いです。
ただ、一つ気がかりなのは、非売品でない物でさえ殆どのショップ様が「業販して欲しい」との要望がありません・・・
私はお客様の為になるなら、他店様にあってウチには無い部品は躊躇せず業販して頂ています。
だけどウチの部品も本当に一部のショップ様しか買って頂いていないのが、儲けとかではなくトリプルを愛す身からすると本当に寂しいですね・・・

早く「フルオーバーホール」という言葉が使えるようになりたいと日々願う毎日です。
皆様、どうぞ良いお年を!

 

 

 

ありそうでなかった物。

 

最近、何故かZ系やGXなどのトリプル以外の大型車の修理も多く入庫します。
KHに限らずヤマハのマイナーな旧車など、こと補給部品に関しては絶望的です・・・
しかしである、ことZ系に関してはフレームとエンジンの窯さえあれば下手すると新車が組めるほどのパーツがあり、トラブルで入庫しても、翌日には淡路島からパーツが届きます。
稀にリプロ品は品質がどうこうとかぬかす輩がウチにもいますが、部品に悩まないで済むZ系は本当に羨ましく、淡路島には足を向けて寝れません・・・
リプロであっても「新品」で組めるという事・・・トリプルアルアルなんですが、どうしてもヤフオク等で中古を探すしかなく、散々競り合って届いた物は「ゴミ」だったとかは当たり前で、一番困るのは、「泣く泣く中古を使った挙句、結局そこがまたダメで再度バラす羽目に」と言う事なんです・・・新品を使う事で一定の安心を担保する事ができますから・・・

 

 

 

と、毎度の事ながら前置きが長くなりましたが(笑)ありそうでなかったKHのメーターインジケーターのカラーレンズを作ってみました。
このレンズはメーターのニュートラルやハイビームを知らせるランプのレンズで、よく中古のメーターを買ったらこのレンズが脱落してて電球が「ピカッ!」と光ってまあ情けないというか寂しいというか(笑)何故かウィンカーの黄色は残ってる個体が多いのも不思議な所です。

 

 

 

何度かてめぇでアクリル板と格闘した事がありますが、まあ小さくて大変です。
なので今回、レーザーカッターにて正確にカットした物を製作してみました。
レーザーはミクロン単位の精度でカットしてくれるので、寸法を吟味に吟味し接着剤なしでも圧入できるくらいの精度で完成しました。

 

 

流石にアクリルの単板なので、純正のような光り方ではありませんが、無いよりは全然マシです。
この画像ではニュートラルが白っぽく写ってしまってますが、もう少し実際は緑です。
これも例によって棚の肥やしにはしたくないのでほんの少しだけ製作しました。
必要な方がいらっしゃいましらHPのお問合せコーナーよりお知らせ下さい。

今後共、トリプル専門店の名にかけて、トリプルを維持して行くのに本当に必要な部品を作って行けたらなと思っております。
中には前出の専用工具の様にマニアック過ぎて何の部品か判らない様な物もあるかもしれませんが(笑)何卒、温かい目で見て頂ければ幸いです。


緑 紺 各色 一個1800円(税込み)

 

KH250&350SS用ボルトオンCDIキット 試作編

長らくお待たせ致しておりますKH250用CDIキットですが、
お問合せの多さに責任を痛感していますが、正直、色々な事に壁にぶち当たっている状況です・・・

「一日一歩、三日で三歩、三歩進んで四歩下が~る」・・・戻っとるがな(涙)

自分でボケて自分でツッコみながら、次々と湧き上がってくる問題に戦々恐々です・・・

 

 

ひとつ問題を解決できたと思ったら、また別の問題・・・
モノ造りとはそういう物かもしれませんが、自分の知識の浅はかさを痛感する日々です。
でもそんな時、アースをミスった二次電流がボクの体内を流れ、指先から「バチッ!」と今まで経験したことのない激痛が走ります!
かなりの痛さなのに、こんなに強いんや!!とニヤける私を他人が見たら間違いなく「変態」扱いなのでしょうね(笑)
唯一のより所は、「強力な点火による調子の良い原動機になる補器の製作」に尽きますから・・・

 

 

フツーのバイク屋では見た事もない、まるでネズミ捕りレーダーの様な計測機器を駆使してテストしていきます。
オシロスコープの波形を何度も確認し、実車に取付け確認します。

 

 

先程、指先を走った激痛よろしく、コンデンサーから一気に放出される強力なスパークは、キック一発でいとも簡単にトリプルを目覚めさせました。
コレはいける!!と確信し、今までの苦労が報われる瞬間です・・・
とはいえイニシャルタイミングの設定や、配線の取り回し、完全ボルトオン化、量産化、耐久テストなどなど、まだまだたくさんの課題が山積みです・・・

 

 

順風満帆とはいかない開発に、誰かの猿真似や、どこかの製品をパクれたらこんな苦労は無いねんけどな・・・とボヤいた瞬間、社長から即答「パチもんには魂が宿らん・・・」と言われ目が覚めた思いです。

ふと見上げたメーカーさんのガレージで炎天下の中、今もなお快適な空間を作ってくれているこのクーラー、恐らく平成どころか昭和から働き続けてるであろうそれに、あえて「エアコン」とは呼ばず、敬意を込めて「クーラー」と呼ばせて頂きたい。
私の製品もこのクーラーの様に、草葉の陰からずっと末永く支え続け、そこに魂が宿るモノ造りでありたいと願って止みません。

 

欠品だったシフタースプリングを制作しました。

 

純正部品の欠品の多さに悩まされるKHですが、こと心臓部の欠品には本当に悩まされます・・・
断腸の思いで開けた心臓部には、できる限り新品の部品で組みたいものです。
ただでさえ2速ギアのギア抜けに悩まされるトリプルですが、この小さなスプリングはシフタードラムを固定するレバーの位置を保持する重要な役割を担っています。そんな大切な部品を40年以上伸び縮みを繰り返し疲労したバネを再使用するのはいかがなものでしょうか?

 

 

そんな思いから以前、製造廃止部品のリターンスプリング(純正品番92081-1118に相当)を自分用に少量制作し、当店でエンジンをOHして頂くお客様のみに使用していましたが、ストックしていた在庫を使い切ったのをきっかけにこの度、量産する事になりました。

 

 

新たに一から図面を起こし直し、材質も現在のSWP鋼を使って製作しています。
一度開けたら、なかなか開ける事のない腰下の使用だからこそ、キックリターンスプリングと同様オーバークォリティーかなと思える素材を厳選し、信頼のおける国内工場で生産しています。

本当に大切な愛車だからこそトライシクルは、こういった見えない部品に拘っていきたいと思っています。

シフタードラムスプリング   1200円(税込み価格1320円)

500SS KH400 トリプル専用 特殊ヘッドナット制作しました。

スタッドボルトに次いで、マッハ用、特殊ヘッドナットを制作しました

H2やS1(750SS、KH250)には採用されず、 H1とS3(500SS、KH400)などに採用された特殊なナットです。
500SSとKH400は共通部品ですので、どちらの車種でも使用OKです。

 

 

エンジンをレストアする過程で避けて通れないのがこのナットです。
せっかくシリンダーやヘッドをガラスビーズなどでブラストしてキレイにしても、
マッハシリーズではこのヘッドナットが結構目立つ為、コレが汚いとナットが浮いてしまいます。当店でも、純正の特殊ナットを再鍍金して再使用していました。

 

 

再鍍金の仕上がりを決めるのは入念な下地処理に尽きます・・・
サンドブラストで下地を整え、ユニクロメッキをかけるんですが、
やはり何度も再使用してくると、表面がザラついてしまい、メッキの仕上がりを悪くします。
それに純正の特殊ナットは柔らかく、ネジ山が緩くなった物も多く見受けられます。
いくらスタッドボルトをクロモリなどの強化品に替えても、ナットも同時に替えないと意味がありません・・・

この特殊なナットの制作には相当手間が掛かりました・・・
もちろん純正ナットは随分前に製廃になっているので、どうせ造るなら少しでもいい物をと思いSS鋼より強度のあるS45C材で製作します。
まず、大き目のS45C材のボルトのネジ山を全て削ってから、ボルトの中心に穴を開け、その穴にネジを切り、さらにボルトの頭を17mmに落とすという二度手間、三度手間を掛け製造します。

 

 

強度的には、シリンダースタッドと同じSCM鋼が理想ですが、SCM鋼とユニクロメッキの相性がよくないんです。
このナットは外からよく見えるので、どうしても純正の雰囲気を崩したくありませんでした。
だから「ユニクロ色」に拘りたかったんです。
ただ、ユニクロメッキはコストは安いのですが、耐候性がイマイチです。
どちらのメッキ処理にしようか迷ったのですが、見た目が殆ど純正のユニクロメッキとほぼ変わらず、若干でも耐候性のある三価クロメート処理を施す事で、耐候性と見た目を両立しました。

強化スタッドと組み合わせる事により、より強靭にトルク管理する事が可能です。
今後、展開しようと思っているハイコンプ仕様などにも対応できます。
何でもかんでも強化すればいいと言う物でもありませんが、エンジンを開けたなら、
スタッドとナットは精神衛生上、新品に交換しておきたいですよね。

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